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その人が何処から来たかなど、どうでもいいではないか。 どんな地位にあるか、どんな功績があったのか、どんな血筋を引いているのか、など全くどうでもいいではないか。 ただ、その人の行いを見よ。 今ここに於いて、何をするのかを見よ。 行いが正しく、羞恥があり、身と心を慎んでいるのであれば、その人は生まれがどうあれ、今から高貴な人ではないか。

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2013/05/09 (Thu)
27日目 ゴレパニ〜バンタンティ(フライト)〜チャンドラコット

快晴の美しい朝になった。
トレッカーが景色を楽しみにプーンヒルに登るなか、私はプーンヒルには行かなかった…

歩く途中で見えたダウラギリ…

昨日 プーンヒルに行き、そこが飛べる場所なのか? 調べたが、100%不可能な場所だった。

美しい朝、プーンヒルには素晴らしい景色が広がっている…
しかし飛べない以上、そこへ行っても仕方がない。

結果、そこで無駄な体力を使わなかった事が後々 プラスになった。

自分はトレッカーではなく、目的は違うところにある!


昨日の段階で今日は歩いてガンドゥルクまで下りる予定を立てていた。

宿を出たのが遅目の9時、ゴレパニから1時間程歩いた時、大きなカルカ(木が生えていない場所)が見えた。

右上の木が無い所がカルカ

「あそこからならテイクオフできる!」気持ちが動いた。

通り行くネパール人に道を聞いても、そこまでの道は無いと言う…

しかしあそこまで行ければ、飛べる可能性がある…

道らしき場所を見つけては、ジャングルに入って行き、引き返す… を何度となく繰り返した。


しかしカルカがある場所には必ずと言っていい程 道はある! 今までの経験上。

何度とジャングルに入っては出てを繰り返し、ついに道らしき道を見つけた!

もちろんリスクも考えた。

奥深く入って、もし道に迷ったなら、昨日の様に嵐になったのなら、どうしたらいいのか?

ジャングルに入って2時間、ついに尾根らしき場所に出た。
その尾根を進んでいく…

開けた場所に出た… そこが目指したカルカだった。

この行為は気質だと思う。

道はない… と言われたのなら、何もそこまでして森深く入って行くのは危険もあり、予定通り飛ぶのは諦めガンドゥルクまで歩いて下りれば丸く収まる。

しかしそこに飛べそうな場所が見えた以上、可能性がある以上、そこに向かわずして納得がいかない!

これはアドベンチャー パイロットに必要な気質だと思う。

もちろ引き返す判断が出来る、明らかに見極める事が出来る、その判断も必要だ。しかしこれは経験の積み重ねが無いと出来ない。

ジャングルに入り辿り着いたカルカからテイクオフ。

時間は11:30、後ろからは黒い雲が迫って来ている… この季節は朝から太陽が照りつけると、9時には雲で山は隠れ、雲は急速に発達し、昼前には太陽は隠れ、アンナプルナサイドから天気は崩れていく…

飛ぶ前に考えていた事はただひとつ、如何に安全にランディング出来るのか?

簡単に下ろせる場所など何処にもない…

飛ぶ前から一ヶ所 見える範囲でランディング出来そうな場所は決めていた。しかしそこは段々畑であり、何かが植えてある場所かもしれない…
そこは飛びながら決断し、ベストな場所に下ろす。






標高差は1500m、10kmは飛ぶ中でその場所を決断した。


谷風を計算し、最後は上昇しながら偏流で段々畑に沿いながら目標の場所に向かう。

「プロの意地にかけてもあの場所に安全に下ろす!」

それしか頭になかった。

狙った田んぼはただ一つ!

完璧だった! 狙った田んぼのしかも狙った場所!
パラグライダーを始めて4年半、そのなかでも最高のランディングが出来た。



渾身のガッツポーズ‼




テイクオフを見つけ、安全にランディングする!これがアンナプルナ一周の要であり、このフライトがアンナプルナ一周の総決算となった。

その後はナヤプールまで1時間かけて下り、3時間かけて今日の目標地 チャンドラコットまで600m登った。

下界は暑い… 34℃だ…

しかもチャンドラコットまでの道が死んでいる道で、がけ崩れに洪水で道が流されていて、廃墟の様な道…


この登りはアンナプルナ一周の中で最もキツかったかもしれない。イラつく気持ちを叫ぶ事で解消しながら登った。

一日で2300m下り、1150m登った…

チャンドラコットに着いたのは夕方5時前だった。


山を登り、臨機黄変に対応し、判断し、決断し、挑戦し、感激し、怪我なく終わる…

そんなアンナプルナ一周の全てが凝縮されたような一日だった。

この一ヶ月で自分が得たものがある。

それは経験だ。そしてそこから生まれる力!

この経験は自分の意識に強さと誇りを与える。

これはプロのタンデム パイロットとして生きていく上でも、大きな意味がある。

プロとは個性であり、そこには何かスペシャルなものが必要になってくる。
それは何であってもいいが、他には負けない分野。それがプロとしての誇りになり、この世界で生きていく糧になる。

飛ぶのが上手い… それだけでは生きてはいけない。
たとえ上手くても、魅力のあるパイロットでなければプロとしてはそこに埋れてしまう。

私にとってその答えがこのアンナプルナ一周であり、次への挑戦になる。

ポカラが近づくに連れ、何か知れない力が湧いてくる…

あと2日だ!

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プロフィール
HN:
kazu
年齢:
53
性別:
男性
誕生日:
1971/09/08
職業:
パラグライダー
趣味:
たそがれ、物想い、静寂、心穏やか、不安、楽しむ
自己紹介:
Kazu
Japan spirits and pride
Professional tandem / Adventure pilot

世界最高峰のヒマラヤ、神の国ネパールで生きていく為に始めた空飛ぶ道具パラグライダーでコマーシャルタンデムをやっています。夢は神の山マチャプチュレへの冒険フライトに挑戦すること。
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